ひとえの着物
いまと今とを紡ぎながら
人は今を生きてゆく
過ぎ去りしいまを慈しみ
未だ来ぬいまに思い馳せて
私はその紡いだ繭で 心の絹を編んでゆく
時間というのは残酷なもので
蚕たちに暇を与えることはない
人間は脆いいきものなので
15カラットのダイヤの無欠さを信じてやまない
人間はいやしいいきものなので
みにくいアヒルを陰で嘲笑う
そうして絹はだんだんとほころびて
わたしたちの眼が霞んでゆく
いま振り返ればもうそれは過去となり
また新しい今がやってくる
新しい繭は純白で透き通っていて美しくて
窓から差し込む眩い未来に思わず息をのむ
それらをただひたすらにひたむきに
わたしはいまをわたしなりに編んでゆく
何にも代えられない たったひとつの衣
それをひとは愛と呼びます
それをひとは幸せと呼びます