2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

めぐりあい

誰もいない山の小路を人は歩く ゆっくりとした足どりで 年輪を刻んだ大樹 苔むした位牌開祖から戦没者へ 老夫婦から若人へ 永遠という名のもとで めぐりゆくいのち 辛さという名の大地で転げながらも続く幸せへの一本道 ふと足をとめる風のさざめき 小鳥のさ…

契り

祈りとともに目をつぶると わたしをめぐる列車が動き出す 窓ごしにうつる海や畑やコンビナートや民家その街にとけこむかつてのわたし 窓のわたしをぼうっと見てたらいつの間にか街は遠ざかり わたしは思いっきり手をふる さよならとありがとうを添えて そし…

まっさら

まっさらなノートにはどんな書き出しがいいだろう これまでのこと これからのこと 誰もいない店の扉を開けるような 鼓動がからたじゅうをめぐるような ただいまを何度も言いかけては引き返し 流行りのカフェテリアに入っては心の空虚さを紛らわした ひととき…

夢よいつまでも

いつからだろう 夢を枕に眠らなくなったのは ツバメは巣から飛び立つのに いちょうは色づきはじめるのに いつからだろう 夢を叶えなくなったのは カモメは海を渡ってくるのに 太陽はいつでもそばにいるのに 見えないものを見なくなると 見えるものが見えなく…

いま

わたしは今日も街を歩く 四車線の大通り 信号機は青に変わり 忙しなく走りゆく自動車 さまざまなカタチで さまざまないまを乗せて どこがはじまりでどこがおわりか 見知らぬ小路といつか来た道が交差する場所 立ち並ぶビルを見上げればかつての記憶が鮮明に…

ひとえの着物

いまと今とを紡ぎながら 人は今を生きてゆく 過ぎ去りしいまを慈しみ 未だ来ぬいまに思い馳せて 私はその紡いだ繭で 心の絹を編んでゆく 時間というのは残酷なもので 蚕たちに暇を与えることはない 人間は脆いいきものなので 15カラットのダイヤの無欠さを信…